60.アニメ映画作品から復習するコスプレ –ジブリ編③–

前回は2006年のファンタジーの名作の映画化「ゲド戦記」までの紹介でした。
今回は2008年公開の絵本のような可愛らしい映画からの紹介となります。

崖の上のポニョ(2008)

© 2008 Studio Ghibli・NDHDMT

「生まれてきてよかった。」(鈴木敏夫)

ジブリが贈る子ども向け作品。
作風としても今までのものと大きく異なり、明確な起承転結や理由づけをせずに、あくまでスピードと勢いで分からなくても分かる作品を作ったという意向があり絵本のような直感的な楽しみ方を狙ったようです。

© 2008 Studio Ghibli・NDHDMT

またこちらの作品は着色前の作画にあえて鉛筆を使用するという、手書きのタッチによる作り方にこだわった作品で、いつもながらジブリ作品の実験的試みを知ると2度も3度も美味しくなる作品です。
ちなみに映画の本場アメリカでは上映箇所の違いこそあれど、千と千尋を上回る興行収入でかなりの人気だった模様です。

© 2008 Studio Ghibli・NDHDMT

前述の通り子ども向け作品としての側面があることから、コスプレは老若男女問わず、特に小さなお子さんにポニョと宗介のコスプレをさせる親御さんもいらっしゃるようで、小さい子のコスプレ入門(英才養育?)にも良いかもしれません。

借りぐらしのアリエッティ(2010)

© 2010 Studio Ghibli・NDHDMTW

「人間に見られてはいけない。」(鈴木敏夫)

スタジオジブリのアニメーターであった米林宏昌さんの初監督作品。
人間の家の中で、決して知られることなく暮らす小人の一族は、人間の生活品をこっそりと「借り」ながら暮らす慎ましい生活をおくっていた。
ある日生まれて初めての「借り」を行う「アリエッティ」はうっかり人間の少年「翔」に見つかってしまうが…。

© 2010 Studio Ghibli・NDHDMTW

実は40年以上も昔の出版当時から企画されていたようでしたが中々実現に至らず、長い時を経てようやく制作が叶うことになった悲願の作品です。
ちなみに北米ではポニョを上回る人気で興行収入もジブリ作品における北米公開最高記録を更新した模様です。

© 2010 Studio Ghibli・NDHDMTW

流石に実際に小人になることはできませんが、コスプレをして何かを「借りて」みたり、はたまた写真合成やあたかも小人になったかのような背景で作中世界を再現するといった面白さと挑戦のしがいがある作品かもしれませんよ!

コクリコ坂から(2011)

© 2011 高橋千鶴・佐山哲郎・Studio Ghibli・NDHDMT

「上を向いて歩こう。」(鈴木敏夫)

宮崎吾郎監督のいわばリベンジ作品。
1963年、テレビ普及が進み日本が復興と経済発展に向けて進展する高度経済成長期の最中。横浜の一角で父を亡くし「コクリコ荘」を切り盛りする女子高生「松崎 海」と、老朽化の著しい部室棟「カルチェラタン」取り壊しに反対する学生たちの一人「風間 俊」は反対運動の最中に知り合い、やがて淡い恋心を抱くようになるが、ある日二人の亡くなった父が同一人物であることに気がついて…。

© 2011 高橋千鶴・佐山哲郎・Studio Ghibli・NDHDMT

コスプレは難しそうな作品ですが、はっきりとした舞台と時代背景があることから、昭和中期の街並みや和洋折衷のレトロな建物が残る場所での撮影が映える作品なためか、意外とコスプレをされる方がいらっしゃるようです。

© 2011 高橋千鶴・佐山哲郎・Studio Ghibli・NDHDMT

ちなみに作中の舞台は横浜ですが、函館も同じように近い雰囲気をもつ街なので主に西地区の古風でレトロな昭和の街並みが背景として利用できます。(まだ疑似聖地としてワンチャンいけますよ!?)

風立ちぬ(2013)

© 2013 Studio Ghibli・NDHDMTK

「生きねば。」(鈴木敏夫)

こちらもモデルグラフィックス誌上にて連載されていた漫画を原作とした、宮崎ジブリ得意の半歴史ドキュメンタリー作品。
(実体験を元にした作品としては初の作品です)
通称監督くんことエヴァで有名な庵野監督が声を当てたことでも有名になりました本作は、第二次世界大戦開戦前の日本の航空機産業の父の一人「堀越二郎」をモデルとした内容です。

© 2013 Studio Ghibli・NDHDMTK

少年時代より飛行機に憧れ設計家を夢見た堀越二郎は、関東大震災や世界恐慌という時代の波の中で国産戦闘機の開発を志す。ようやく完成した試作機が空中分解の挫折を味わうが、多くの人に支えられながら日本を代表する戦闘機である「零式艦上戦闘機」の元となる「九試」の飛行試験に臨むのであった。

© 2013 Studio Ghibli・NDHDMTK

弊社愛煙家の方々からは「見てるとタバコが吸いたくなる」という評価(笑)
やはり最近の作品ということもありコスプレとしてもチラホラお見かけすることができ、二郎さんと菜穂子さんのペアコスが尊みいっぱいで映画を見た後ではついつい涙がほろりとしそうになります。

かぐや姫の物語(2013)

© 2013 畑事務所・Studio Ghibli・NDHDMTK

「姫の犯した罪と罰。(鈴木敏夫)」

こちらは高畑監督作品であり、最後の作品。
日本アニメ映画としては破格の8年の歳月と巨額の製作費をかけて作られた大作。
前述の「ホーホケキョとなりの山田くん」で培った、本当の手書きのような線をアニメにするというとんでもない枚数と労力と費やした作品です。

© 2013 畑事務所・Studio Ghibli・NDHDMTK

作品はタイトルの通り誰もが知る「竹取物語」を元にした作品で、全く違う印象を与えるものにしたいとの目論みで制作されました。
画風の影響もありかなり難解に見えますが、元は古典の「竹取物語」であることを考えると決して不可能なコスプレではないということも考えられます。

© 2013 畑事務所・Studio Ghibli・NDHDMTK

純和風ファンタジーの原点作品として現代にコスプレで具現させてみるのもいかがでしょうか?

思い出のマーニー(2014)

© 2014 Studio Ghibli・NDHDMTK

「あなたのことが大すき」
「この世には目に見えない魔法の輪がある。」(鈴木敏夫)

こちらはアリエッティと同じ米林宏昌監督がメガホンをとった作品。
イギリスの作家、ジョーン・G・ロビンソンによる児童文学作品の映画化で、ただしそこはジブリらしく原作の舞台であったノーフォーク州の村を北海道の主に道東方面にモデルを変更し、より馴染みやすい作品としてアレンジしました。

© 2014 Studio Ghibli・NDHDMTK

病気療養で親戚夫妻の暮らす海辺の田舎に預けられた杏奈は、なぜか知らないはずなのに見覚えのある古い屋敷を見つけ、廃屋に見えたその屋敷でやがてマーニーという少女と出会うことになる。

© 2014 Studio Ghibli・NDHDMTK

メインキャラクターである2人の可愛らしい姿はコスプレとしても成り立ちやすく、ネットで検索してもこちらの作品を再現されている方がいらっしゃいましたので、ぜひ参考に!

レッドタートル(2016)

© 2016 Studio Ghibli – Wild Bunch – Why Not Productions – Arte France Cinéma – CN4 Productions – Belvision – Nippon Television Network – Dentsu – Hakuhodo DYMP – Walt Disney Japan – Mitsubishi – Toho

「どこから来たのか どこへ行くのか いのちは?」(谷川 俊太郎)

© 2016 Studio Ghibli – Wild Bunch – Why Not Productions – Arte France Cinéma – CN4 Productions – Belvision – Nippon Television Network – Dentsu – Hakuhodo DYMP – Walt Disney Japan – Mitsubishi – Toho

日本、フランス、ベルギーの3カ国合作映画作品。
そのため監督も異なり、純粋にジブリ映画として数えるかは微妙なところですが(タイトルにはいつものトトロのシルエットマークが出てくる)カンヌ国際映画祭においては「ある視点部門 特別賞」を受賞するなど、多数の賞を獲得した大作となっています。

© 2016 Studio Ghibli – Wild Bunch – Why Not Productions – Arte France Cinéma – CN4 Productions – Belvision – Nippon Television Network – Dentsu – Hakuhodo DYMP – Walt Disney Japan – Mitsubishi – Toho

作中は一切台詞がなく、呼吸音などの音のみで構成されるうえ、役名も「男」「女」「息子」の3人のみで、誰が声を当てたのかは不明となっています。
そのためコスプレは本当に難しいと思われます。
(真っ赤な亀のコスプレの方がいっそ分かりやすいかも!?)

君たちはどう生きるか(2023予定)

© STUDIO GHIBLI Inc.

吉野源三郎先生の小説「君たちはどう生きるか」からタイトルを取った本作。
しかしながら内容は全く異なり、元の教養教育古典としての内容から冒険活劇の物語として作成される模様です。
公開まではまだ2〜3年かかるという話もあり、どのようなビジュアルになるのかも全くの謎ではありますが、今後の期待も込め今後公開される作品の情報ももちろんしっかりとチェックしていきたいと思います。

その他の「ジブリ」のコスプレ

まだあるんですけどね「ギブリーズ」とか、もっとマニアックなものでは「柳川堀割物語」とか、ですがジブリといえば映像作品だけでなく、「宮崎駿の雑想ノート」や「三鷹の森ジブリ美術館」など、広く公開されている映像や映像作品に限らず、多くの作品展開によって私たちの目をいつも驚きで満たしてくれるものばかりです。
その中にはもちろん、映画未登場の宮崎駿ワールドのキャラクター達や高畑監督をはじめとしたその他ジブリスタッフの方々の様々なアイディアが詰め込まれています。
たとえば三鷹の森のイメージボードにはスタッフの制服やキャラクターイメージ(映画館ブースのスタッフには付け髭をしてでも”ヒゲ”をつけたい!という要望など)を色々と想いを描き込んでいたりしますので、そんな小さなところからコスプレのイメージ等にインスパイアして行っても面白いかもしれません。

比べるような書き方をするとなんだか尊大な感じもしてしまいますが、コスプレも一つのアートです。
よりスゴイと思えるアートの世界を再現してみたり、他作品&他形態であっても何らかの形で技術やイメージを取り込むことができれば、もっと面白いコスプレができるかもしれません。

今年のコスプレも様々な作品に目を向けて、広い視野でより多くの楽しみを広げて行けるといいですね!

参考:Wikipedia、スタジオジブリ三鷹の森ジブリ美術館、ジブリ関連書物等

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